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「一曲単位で音楽を買うなんて邪道」という主張について

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iTunes Storeで手軽に一曲単位で音楽を購入できるようになってからは、CDを買ってた頃と比べると、新しい音楽に手を出す敷居が随分と低くなったように思う。J-ROCK中心だった自分もJAZZやら洋楽やらといろんなジャンルの音楽に手を出すようになった。

ただそんな風潮のなかで、先日昔からの友人が「一曲単位で音楽を買うなんて邪道や。アルバムという一つの作品なんやから通しで聴かんと」などと主張しておりまして、これが妙に頭に残っているのであります。

 

アーティストはアルバム制作の際、だいたいの場合、コンセプトを考えて制作しているかと思う。アルバムを通じてひとつの世界観やメッセージを伝える…だとか。それに合わせて曲順なんかも色々考えてるはず。

自分も毎年の年末は、その一年のふり返りとなるプレイリストをつくったりしてるのだけども、自己満の世界とはいえ、それなりの時間を費やして考えるもの。なぜこの曲をチョイスしたのか。この曲の終わりからこの曲につなげたらハマるんじゃないかとか、アルバムをつくる上では色々と作り手の意図があると思うのですよ。

先の友人の主張は「どうせ音楽を聴くんだったらそういう制作者のこだわりまでちゃんと見ようぜ」っていう類の発言であり、これには自分も完全に同意するわけなのであります。

 

でも実際問題、アルバムまるごと購入せずに、その中の気になる曲だけをピックアップして買って聴いていたりする。その背景には、「気軽にダウンロードして買うことができるようになった」ことがまあ当然大きな要因なのだけど、それ以外にも音楽の聴き方自体が変化してきていることも関係しているように思う。

 

そう、ずばりApple Musicの存在ですよ。「For you」で自分好みのプレイリストを作成してくれたり、季節や時期に応じてタイムリーなコンセプトでプレイリストを提供してくれる。たとえば最近だと『新年の誓い:J-ROCK』っていうプレイリストがリリースされていて、「フレッシュな気持ちで新年の誓いを立てたいときのために、心機一転したい思いや次のステップへと向かう決意を込めた楽曲」が集められている。これがなかなか気分とマッチしたものになっていて心地いい。

他にもステーション機能を使えば、自分の嗜好に合った曲をランダムでどんどん流してくれるので、この一年で新たに聴くようになったアーティストは数知れず、という状況。

とどのつまり最近では、ライブラリからアーティストを選んで聞く、というスタイルではなく、ステーション機能かFor youで紹介してくれるおすすめプレイリストを聴くというのがメインになってきているというわけです。

 

そんなこんなで、アルバム作品という形で音楽鑑賞することが少なくなったと。自分で探して音楽を手に入れるのではなく、キュレーションされたものを受容していく感じですかね。その結果、“狭く深く”から“広く浅く”にどんどんシフトしていってる。

それ自体は別に悪いことではないし、まあ便利になっていってるんで良い流れだとは思うんですけどね。結果、アルバムに込められた作品の意図にふれることがなくなってきているのは、少々複雑なのです。

友人との間でも「このアルバムが名作だよね」とか、そういう話題が減っていってるのも少し寂しい。そもそも自分の嗜好に合った曲でプレイリストを用意してくれる機能(Geniusやステーション)が充実しすぎて、「聴き方は人それぞれ」が前提になってきているのも要因かもしれない。

 

CDがなくなったら、もっとこのモヤモヤは加速するのかもなーなんて思いつつ。本日はこれにて。